俺はそっと千石さんの手を握った。

ずっと緊張しつづけていたのだろう、すごく冷たい手。

俺は握る手に少し力を込めた。


「ねぇ、千石さん?」


繋いだ手から俺の気持ちが全部伝われば良いのに。

想いを言葉にするのは、とても難しいから。

いや、違う。


「俺も、アンタのこと永遠に好きでいることに保証はもてないと思う・・。」


言葉にするのが難しいんじゃないんだ。


「だけどさ。俺にとっちゃ未来なんてどうでもいいことだ。」


千石さんが俺の目をまっすぐ見てる。

俺の言葉を分かろうとしてくれてる。

伝えたいんだ、この想いを。


「在り来たりかもしれねーけど、さ。
大切なのは今この瞬間俺があんたを愛してるって事。
アンタが俺を愛してくれてるって事。なんじゃねぇかな。」


言葉にするのが難しいんじゃない・・・・・言葉なんかじゃ足りないんだ。

俺のこの想いは言葉なんかじゃ伝えきれない。


「切原・・・くん。」


ありったけの想いを込めて、千石さんを抱きしめる。

言葉からは零れてしまった想いを全て、この人に伝えたい。


「一人で・・・悩むなよ。こういう事は二人で悩めば良いことだろ?」


千石さんが腕を背中にまわしてくる。


「うん、ごめん。」


「今の俺がいるのはアンタのおかげなんだから。

未来がどうなろうとそれは絶対後悔なんかしない。」


「・・・俺も。」


なぁ、本当に愛してる。

って伝わった?

未来がどうなろうとそんな事知ったことじゃない。

今、この瞬間。

それが何よりも愛しいんだ。


「大好きだから。」


千石さんがゆっくり目を閉じる。

俺はそっとキスをした。


「・・・ねぇ、切原くん。」


ゆっくりと目を開いて、千石さんがとても綺麗に笑う。


「今この瞬間、キミのことを一番愛してるよ。」



甘く甘く囁かれた言葉に、少し眩暈を起こしそうになりながら。


さっきよりも深く口づける。


どうか、この人に想いが伝わるようにと、願いながら。










もし、どんな未来が来ようとも、
この瞬間俺がアンタを愛してたことだけは忘れたりしない。



なぜか、そう思った。