「切原くん、改めて、誕生日オメデトウ。」


「うっす。」


千石さんが買ってきてくれたケーキの蝋燭を吹き消す。

甘いものがあまり得意じゃない俺のために、ビター系のケーキ、

しかも二人で食べきれるものをわざわざ探してきてくれたらしい。


「ゴメンね、こんなものしか用意できなくてさ。」


「んな事ないっすよ。これで十分。」


「でも・・・プレゼントとかもっと良いもの買いたかったのになぁ。」


ちょっと拗ねたように口を尖らせるのがこの人の癖。

最近だんだん分かってきた。


「ちゃんと祝ってくれたことだけで、十分だって。ね?」


「ホントに?」


「それに、あんたなりに今日は気ぃ使ってくれてんでしょ?」


俺の言葉にキョトンとした表情をする。

分かってるくせに・・・。


「・・・ホントに泊まっちゃって大丈夫なんすか?」


「あ、うん。大丈夫、元々そのつもりで来たから。」


そう言って笑う千石さんが座ってるのは、俺のベッドの上。

今日は千石さんが初めて俺の家に来てくれた。

いつもは遠いからって断られてたのに・・。

それだけじゃない。

わざわざ学校まで迎えにきてくれたし、デートの時も何か

・・・いつもの倍優しかった気がする。

これが気を使ってなくて、何だというんだ。


「切原くん?どしたの。」


「あ、いや。何か改めて感動しちゃって・・。」


「感動?」


「千石さんが、俺の部屋にいるんだなぁって・・・。」


どうせ何時ものように軽く交わされると思いつつ、言ってみた。

ってあれ?

反応が返ってこない。


「千石さ・・・ん?」


千石さんは真っ赤になって俯いてた。

嘘だろ、オイ。


「・・・・っばっかじゃないの!?そんなの・・・で感動、とか。」


慌てて言い返してくる表情も何時もと違って、余裕がない。


「・・どしたんっすか?」


うぅ、と小さく呟いて、千石さんはまた俯いてしまった。


「えっと・・・もしかして・・・緊張して・・」


「当たり前だろ!!もう、俺がここまで来るのにどれだけ大変だったか!!

あーヤダヤダ。こんなの俺じゃないよ!」


きつく睨んだ瞳は心なしか潤んでいた。

俺は何も言えなくて、ただ千石さんを見つめる。

しばらくして、少し落ち着いたのか千石さんは小さくため息をついて、ちょっと笑った。