放課後携帯を開いて、一目散にお目当てのメールをチェックするのが日課。

「ん、なんだって?」



《今日は暑かったから、コンビニでアイス買って、公園デートしないv(・∀・*)。
待ち合わせは・・・・》
















「ここのメーカーのバニラ好きなんだよねぇ。」

隣で美味しそうにカップのアイスを食べてる千石さん。

「そうっすか?俺は断然チョコだけど。」

俺も一口パクリ。

マジ旨い。

やっぱ夏はアイスだな。

「邪道だね。アイスの基本はバニラでしょ。」

「とか言いつつ俺のチョコ食べんなよ。」

ちゃっかり一口すくってるし。

「まぁまぁ、一口ぐらい良いじゃん・・・ん、おいしい。」

アイス泥棒もとい、千石さんは満足そうに笑った。

「だろ?バニラより絶対こっちだって・・・って俺にも一口よこせよバニラ。
アンタ何そんなに死守してんの!?」

スプーンを近付けようとしたら、ひょいと躱される。
二度目のチャレンジも同じ結果に終わった。

ムキになって腕を掴もうとしたら、立ち上がって走り出した。

「あーげないっ。邪道の君になんか絶対あーげーなーいー!」

たまらず全力で追い掛ける。

「なっ・・にを。アンタだってチョコのこと散々けなしてただろ!!」

「はい、残念でした!これが最後の一口でーす。」

振り返ってスプーンをこちらに見せ付けてくる。

嫌な予感。

「あっ!!ちょい、よこせって・・・あぁっ!?」

そしてそのまま口の中へ。
「あーおいしかった。ごちそうさまでした。」

千石さんはわざとらしくそう言って立ち止まった。

その顔には勝ち誇った笑みが浮かべられている。

「・・・マジかよ。最低だよ、アンタ。」

「あ、拗ねた?」

「拗ねてねーよっ!」

そのにやけ顔を止めろっ!
ムカつく!!

「可愛いなぁ、キミは。」
千石さんは小さく堪えるように笑う。

アンタ、潰すよ!?

「だから、拗ねてないって・・・・!!?」












ちょっと待て。


何、今何された俺。


不意打ち過ぎて状況が掴めない。







もしかして。

・・・・キ・・スされた?

「んなっ、な、何やんのアンタ急に!!」

目の前の千石さんは大爆笑。

焦ってる俺を見て楽しんでるよ、この人。

なに、何なの、イジメ?


「アハハ、満足した?」

「・・は?」

告げられた言葉が理解不能。


「バニラ味。」

ぺろっと舌を出して笑う姿に絶句。

いや、確かに。

確かにしたけどバニラ味。

ってか今もほんのり残ってるけど。


何かそういう問題じゃ・・。


「仕方ないなぁ、もっかいする?」



その表情は反則だろ。


絶対分かっててやってるんだよなぁ、この人は。


俺って遊ばれてるんだろうな。











「いらない?バニラ。」

「・・・いただきマス。」

ま、それでも好きなんだから、仕方ないか。


★end★






















「なぁ、赤也アイス食いに行こうぜ、アイス。俺バニラ食いてぇ。」

「バッ・・・・。」

「赤也、お前何赤くなってんの?」

「・・い、いやだなぁ丸井先輩。赤くなんかなってないっすよ!!」

「変な赤也。」


あれからしばらく、バニラに敏感になってしまった赤也だった。


★true end★