だってそうだろ?
いくら頑張ったってあの人の心の中に俺が入る隙間なんて、ない。
分かりきってる事をとやかく言ったって、虚しいだけじゃん。
だから良いんだ。
このままで。
どんなにつらくったって、側にいられるのなら、それが一番いい。
そう、決めたんだ。
ようこそ、切なさ
いつもの所で待ってるね。
清純
部活が終わっていつものようにメールをチェック。
届いていた3通のうち2通はメルマガと出会い系。
残りの1通はとあるフォルダに振り分けられていた。
フォルダの名前は『ラッキー』。
ココに届くメールといったらあの人からのものしかありえない。
自称ラッキーボーイ、千石清純。
内容はたったの1行。
あの人らしくない。
フォルダに入っているほかのメールを開く。
件名:ちょっと聞いてよ!!
送信者:千石 清純
ちょっと聞いてくれる(>_<)!!
南ったら酷いんだよ?
今日ね、ちょっとだけ、ちょっとだけ昼寝しようと思ってたら、かなり寝ちゃってて。
それで部活遅れたら、頭殴って、しかもその後外周10週とか言われた(T_T)
ありえないよねー!!外周10週って部活の時間内じゃ終わらないじゃん!
だから、これからサボろうと思うんだけど、切原君もどう?
いつもの所にいるから、気が向いたら来てねー(^o^)丿
愛しの清純よりvv
件名:あのさー。
送信者:千石 清純
切原君、今ヒマ?
俺、今どうしてもカキ氷が食べたくなっちゃって(゚-゚)
いつもの所で、確か『季節はずれのカキ氷』って言うメニューがあった気がするから行こうと思うんだけど、来ない?
まぁ、もう夜中に近いし、無理強いはしないんだけど、来てくれると嬉しいなぁ。
返事待ってます!早めにね?
キヨスミ
件名:ごめんね
送信者:千石 清純
ごめんね。
今日はせっかく誘ってくれてたのにすっぽかしちゃって。
急に用事が入っちゃったんだ。
どうしてもはずせない用事。
切原君には色々迷惑かけちゃってるよね。ホント、ゴメン。
でも、切原君にもきっと大切な人ができたら分かるよ、この気持ち。
・・・・・なーんてね。
明日、ヒマだったらメールちょうだい。
まってる。
キヨ
次も、その次も、送られてきたメールは全部こんな感じ。
まぁ、あの人らしいっちゃ、らしいんだけど。
だから、この、一行だけの。
ただ用件を伝えるだけの。
このメールは、多分。
あの人なりの、SOS。
俺には助けて、助けて、って言ってるようにしか見えない。
おそらくそれは、あいつのせいで。
俺にとってはだいっ嫌いで、あの人にとっては大好きな、あいつ。
何で、あの人は、千石さんは、あいつの事を愛してるんだろう。
いつも振り回されて、傷つけられて、泣かされて。
それでも何で、あんなに愛しそうに、あいつの話をするんだろう。
俺は何で、そんな千石さんの事を、愛してしまっているんだろう。
畜生、泣けてきた。
もう、何度も何度も問いかけて、答えなんて出ないのに、また同じように問い掛けてる。
虚しいだけってわかってる。
こんな行き場の無い想いは、つらいだけだ。
だったら、捨ててしまえばいい。
今、送られてきた、このメールを無かった事にすればいい。
俺は急いでメール作成画面を開く。
そして、一つの文章を打ち込んだ。
送り先は決まってる。
送信先:千石清純
題名:無題
スイマセン、行けないっす。
後は送信ボタンを押すだけ。
そしたら、全部終わりだ。
俺は送信ボタンを押そうと指を動かす。
押すだけ。
それで、おしまい、だ。
本当に?
これでおわり・・・・・に出来るのか?
本当に俺はそれで忘れられるんだろうか。
俺は・・・・。
送信完了のメッセージを見てから携帯をポケットに突っ込む。
そして、俺は歩き出した。
向かう先は、決まってる。
もう、二度と迷ったりしない。
そう、決心したから。
〜♪
聞きなれたメロディーと共に携帯が震えだす。
千石はゆっくりと携帯を開き、届いたメールを見た。
送信者:切原 赤也
件名:無題
今すぐ行くから。