プラットホームでぼけーっと線路を眺めていた。

通学ラッシュのこの時間、人は増えるばかり。

約束の時間は過ぎるばかり。

何時ものこととは言え、虚しいことに変わりは無いわけで。

思わずその場にしゃがみ込みたくなった。

どうせ、少しぐらい会える時間が減ったって、
彼は気にしないんだ。

オレみたいに一分一秒でも惜しいだなんて、思わない。

なんだかもう、どうでもよくなってきちゃったなぁ・・・。

深くため息をついて、階段の方を向く。

人が多すぎてやってくる姿を確認なんか出来やしなかった。

「千石さんっ!!」

それでも、声だけは聞こえて。

オレはもう一度階段の方を向いた。

ぶんぶんと手を振りながら、彼がやってくるのが何となく見える。

「おはよう、切原くん。」

はぁはぁと荒く息をしてる彼に、
さっき買っておいたスポーツドリンクを手渡す。

「どーもっす。・・・つーかすいません、遅れて。」

ぐびぐびと一気に飲み干す姿を見ながら、自然と笑っていた。

「いーよ、もう慣れたから。まだ、ちょっとは時間あるしね。」

住む場所が離れているせいで中々会えないオレたちは、
ある計画を立てた。

朝、電車がくるまで一緒に居ること。

とはいえ、使う駅も全然違うオレたちなので、無理やり
真中らへんにある駅を、待ち合わせ場所にすることにしたのだ。

タイムリミットは、
切原くんの乗らなきゃならない電車が来るまでの
15分間。

本当はもっともっと一緒に居られたら良いのだけど、
どう頑張ってもそれが限界だった。

おまけに、切原くんは遅刻常習犯なので
今まできちんと
15分間きっちり居られたことは無い。

今日も、あと5分もあるかどうか、な感じだ。

「千石さん、実は言わなきゃいけないことがあって、ですね。」

「なんだい?」

嫌な予感がしつつも笑顔で訊き返す。

「明日からしばらく、
待ち合わせが出来なくなるんっすよね・・・。」

「何かあるの?」

オレの言葉と同時に
“間もなく
1番乗り場に電車が到着します”とアナウンスが流れる。

「あーもう行かなきゃ・・・あの、
詳しいことは昼にでもメールしときます!」

切原君の乗る電車がゴーっと音を立てて到着した。

「ホント、すいません。じゃ、また!」

ニッコリと笑って手を振って、切原君は電車に乗り込む。

オレは呆然とただそれを見ているだけだった。

電車が動き出して、すぐに見えなくなった。


腕時計に目をやる。


オレの電車が来るまで、あと、30分。







プラットホームに電車が滑り込む瞬間。
本当はいつも死にたくなる。なんて、言えない。