大好きだった。

いつだってキミのコトを考えちゃうぐらい。

たくさん泣いて、たくさん悩んだ。

好きだからこそ、うまくいかないコトだらけで。

ずっと苦しかった。

でもね?

だからやめてしまおう、だなんて一度も思わなかった。

思えなかった。

だって・・・好きだから。

キミが好きだったから。


だから、もう良いんだ。

こうなってしまうことは、逆らい様のないことだった。

そうだよね。

















「もうすっかり冬っすね。」


白く息を吐きながら、切原くんが言う。


「そうだねぇ。今日辺り雪でも降るかもね、ってお天気お姉さんが言ってたよ。」


見上げた空はいかにも、な感じで。

今日ばかりはお姉さんの言うこともあながちハズレじゃなさそうだ。


「イルミネーション・・キレイっすね。」


オレたちが歩く大通りは一面光で飾られていて、その眩しさに切原くんが一瞬顏をしかめた。

オレはそんな彼の横顔を見ながら、もうすぐ来るであらう刻をただ静かに待っていた。


「・・・千石さん。」


足を停め、切原くんがオレの方を向いた。

今日初めて、二人の視線が合う。


「キスしても、良い?」


切原くんはこう見えて照れ屋だから、街中でこんなこと言う人じゃない。

けど、オレはちっとも驚いたりしなかった。

彼の表情が全てを物語っていたから。

うん、分かってるよ。

そろそろ、終らせなきゃ、ね?


「・・・いいよ。最後だから、ね。」


目を閉じる瞬間に見えた、切原くんの頬を伝う涙には・・・気付かなかったことにしよう。

もう、これ以上何も考えない。

ただオレは、受け入れよう。


「千石さん・・大好きでした。」


うん、オレも。

大好きだったよ、切原くん。

幸せに、なってね。






















走り去っていく足音を聞いてから、オレは目を開けた。

一番に視界に入ってきたのは・・・雪。

静かにハラハラと舞い降りてくる雪。

眩いばかりのイルミネーションとうまくマッチして、とっても綺麗だった。


「・・まぶしいな。」


小さく呟いて、掌で目を覆った。


「ホント・・まぶしい。」

掌をはずし、歩き出したオレをすれちがう人たちが皆、怪訝そうに見つめる。


涙が溢れて止まらなかった。













ねぇ、切原くん?

キミに出逢えたコトはとってもラッキーだったよ。

多分、これ以上のラッキーなんて、もう一生ないだろうってくらい。

大袈裟だって?

うん、そうかもしれないね。

そうかもしれないけど、でも。

それくらいキミの存在はオレの中で大きかった。

幸せだったよ、とっても。

何にも間違ってなんか、なかった。

そうだよね?