――本当は、とっくに気がついてたんでしょ?
「・・・切原、くん。」
――アンタが跡部さんと別れたあと俺のことをちゃんと見てくれるようになって、めちゃくちゃ嬉しかった。
「・・・・。」
――でも、同じくらい恐かった。
「なんで・・?」
――あんなに好きだった人をあんなに簡単に手放せてしまうアンタが、恐かった。
「それはっ・・。」
――分かってるよ。跡部さんに幸せになって欲しかったんだろ?だから、忍足さんに譲ったんだよね?あんたは。
「・・・・・っ。」
――嘘つき。
「切原君。」
――本当は自分で幸せにしてあげたかったくせに。
「・・・・もう、良いよ。」
――ずっとずっと、後悔してるくせに。
「・・・・やめてよ。」
――やめないよ。どうせもう、アンタは戻ってこないんだから。
「どういうこと?」
――言っただろ?あんたはきっと大人になってしまうんだって。
「だから・・・」
――分かんなくて良いよ、今は。きっとすぐに気が付くから。だから、今は言わせて。
「切原君?」
――俺はアンタを幸せにしてあげたかったよ?でも、もうきっと俺じゃあ駄目なんだって気がついてしまったから。俺も、あんたも。
「そんなことないよっ!!」
――本当は・・・言わずに綺麗なまま自然と終われたらいいなって、ずっと考えてた。けど、多分言わないとこのままずるずると続けちゃいそうだから、あんたは。
「嫌だよ・・・。」
――始めてしまったのは俺らなんだから、終わらせるのも俺らじゃなきゃ。
「どうして・・・。」
――アンタのことが好きだから。
「俺だってっ!!」
――千石さん。これだけは覚えてて。
「嫌だよ。切原君。うそでしょ?」
――切原赤也って男が、アンタのことすごくすごく好きで、泣きたくなるくらい愛してたって。
「・・・・ゃだよ・・。」
――もし、アンタが一瞬でも俺のことを好きだって思ってくれていたなら、それは忘れて。
「あかや・・くん。」
――でも、本当にそんなことあったのかな?
・・・ねぇ、千石さん、俺はアンタに愛されてるなんて思ったこと。
――
一度も無かったよ。