「跡部くん、俺はね、キミに愛されたかったよ。」
――愛してやったじゃねえか。
「でもキミ、いつも他の所を見てた。俺じゃなくてさ。」
――そんなこと、ない。
「もう良いよ。ホントはずっと分かってて知らん振りしてただけだから。」
――何を?
「キミの視線の先にいる人のこと。」
――どういうことだ。
「ゴメンね、俺、もう知らん振りを続けてられるほど、余裕が無いんだ。」
――余裕?
「俺だって、幸せになりたいんだよ。」
――だから、俺が。
「キミは俺とじゃ幸せになれないだろ?それじゃあ、意味がないんだよ。キミも俺も幸せにならなくちゃ。」
――ワケわかんねぇ。
「うん、キミには分からないだろうね。でもきっとすぐに分かるよ。彼が分からせてくれる。」
――彼?
「そう、彼ならきっとキミを幸せにしてくれる。俺が言うんだから間違いない。」
――誰のことだ。
「・・・・とぼけないでよ。それとも、その名前まで俺に言わせる気?キミってホント残酷だよね。」
――千石。
「幸せになろうよ。キミは彼と。俺は・・・」
――誰と?
「さぁ、ね。とにかく、今までありがとう。つらかったし、しんどかったけど、ちょっとだけ幸せを感じたよ。」
――酷い言い草だな。
「最後くらい言わせてよ。今までの君の仕打ちを考えたら、悪口なんて可愛いもんだ。」
――そりゃ、悪かったな。
「でもやっぱり、愛はあったって勘違いしてても良い?・・・・そうでもしなきゃ、俺が救われない。」
――あぁ、勝手にしろよ。
「うん、勝手にしとくよ。跡部くんみたいな人に愛してもらえてたなんて、一生の自慢だね。」
――お前は、どうなんだ。
「俺?・・・もちろん、愛してたよ。」
――嘘くせぇセリフ。
「そうだね。気付いてた?俺たち『愛してる』だとか『好き』だとか言い合うの、初めてなんだよ。」
――そう、だったか?
「ほら、気付いてない。まぁ、もうどうでも良いことだけどね。」
――どうでも良い、か。
「きっとすぐに忘れちゃうよ。俺たちが一緒に居た時間なんて一生に比べたら、ちっぽけなもんだ。」
――そうだな。すぐに忘れるだろうな、お前は。
「・・・・キミも、でしょ?幸せになるんだよ、俺の愛しい愛しい、跡部くん。そして・・・・」
「・・・・彼と2人で地獄に落ちちゃえばいいんだ。」