「銀時、死にたいって思ったことある?」
団子屋の店先の長いすに並んで座って団子が来るのを待っていた。
いまさら話す話題も無くて、何となく思いつきで訊いてみる。
「んぁ?ねぇよ、そんなもん。」
意外だった。
いつものらりくらりと何となく生きているから、
最低でも一回ぐらいは考えたことがあってもおかしくないと思ってた。
つまらない、って思ったこと無いのだろうか・・。
毎日毎日同じように同じ場所で同じ人たちと生きること。
「もしかして。お前はあるんだ?思ったこと。」
「あるよ、ってか今思ってる。」
「そりゃまたなんで。」
ぽかんとした表情で訊いてくる。
「世界がつまらないから。」
銀時が一瞬考えるそぶりを見せ、そのあと笑った。
「なんでかねぇ、こんなにいいとこなのに。」
店員がやってきたので、とりあえず会話を中断した。
銀時の最近のお気に入りだというこの店は
オレにとってもお気に入りになりつつある。
最近なんだかんだと連れ回されて、そのたびにこの店に立ち寄っていたからだ。
確かに、ここの団子はうまい。
「おぉ、らっきー。」
銀時が置かれた団子の皿を見て嬉しそうに呟いたので、
オレも自分の皿に目を向ける。
「あ、」
団子が一本多かった。
いつもなら3本のはずの団子が4本になっている。
店に入っていくところの店員に戸惑いの視線を送ると、ニッコリと微笑まれた。
「常連さんにはサービスを、ってね。
長く生きてりゃ結構いいことあるよなー。」
銀時の何気ない言葉に、顔を上げるとウインクされた。
「キモいよ、おっさん。」
「んなっ、俺はまだ20代だ!!」
酷く満たされた気分の俺は、団子をぱくりと口に入れて、
銀時にウインクを返したのだった。
君が知らなくてもね、
世界は美しいんだよ。