夢をみた。

真っ白に積もった雪のなかに俺は立っている。

独りで立っていた俺は、何かを見つけて走りだす。

辿り着いた先には、赤く染まった雪景色が広がっていた。

あぁ、そういえば俺が殺したんだっけ・・・。

そう気付くとそこには、ついさっきまでヒトであったモノがいくつも転がっていた。


これが夢であれば良いのに。

そう願い、逃げ出すと、そこで目が覚めた。




「山崎・・大丈夫か。」

目を開いて、一番に目に入ったのは心配そうな局長の顔。

「俺、一体・・・」

ひどく記憶が曖昧だ。

おそらくここは屯所だろう。

でも、どうして俺は寝ていたのだろう。

「倒れたんだよ、お前。」

姿は見えないが、副長も近くに居るらしい。

「倒れた?」

「あぁ・・・」

副長にしてはめずらしく歯切れが悪い。

「副長・・・?」

「山崎、お前覚えてないのか・・。」

局長が苦しそうな表情で聞く。

「何・・を・・」

一体俺は今まで・・・。

瞬間、頭の中に今まで起こったこと全てが蘇ってきた。

雪、血、叫び声、そして・・・死。

「俺・・は・・人を・・」

そうだ、思い出した。

俺は殺した。

犯人であった奴を。

この手で・・人を。

「うっ・・・あ・・・・っ」

頭が・・痛い。

「山崎、落ち着けっ!」

「山崎っ!!」

局長や副長の制止を振り切って、俺は走りだしていた。







もう何も考えたくなかった。





ただあの景色から逃げ出したかった。





雪を染めていく・・・赤い・・色。