「ねぇねぇ、阿部っ!!」


人が溢れる神社に向かって走りながら、振り返って笑顔を見せる。


「おい、気をつけろよっ、こけるぞ!っておい!!」


言わんこっちゃない。


が、足元に薄く残っていた雪で滑って思いっきり転んだ。


「大丈夫か?」


「ん、だいじょぶ。ねぇ、手、貸してよ。」


そう言って右手を伸ばしてくる。


仕方なく左手で掴んでやると、が楽しそうに笑った。


「よっこいせ、と。」


「・・・・・おい。」


「ん?」


何?と視線だけで問われる。


「手、もういいだろ。」


そういった途端、いっそう強く握られる。


「おい、バカ。放せ。」


「やーだねー。良いじゃん別に、今年最後なんだし。」


「ソレとコレとは話が別だろ。ってか関係ない。」


俺の話なんてひとつも気にしてないように、が笑う。


そして、そのまま歩き出した。


「一度やってみたかったんだー。こういうの。」


鼻歌を歌いながらが言う。


「・・・・バカだろ。」


「うん、バカだよ。つーか俺の頭の中見せてあげたいなぁ。」


「は?」


ワケが分からず横顔を見つめていると、もこちらを向く。


「隆也のことでいっぱいだから。」


「っ・・・・ばっ、バカか!!」


「なんてねー。お、めっちゃ混んでるなぁ。よーし、放すなよ隆也。」


ずいずいと人ごみを掻き分けて進んでいく。


結局手をつないだままだということは、もう諦めることにした。
















「ねぇ、今何時?」


少し落ち着いた場所に着くと、が思い出したように訊いてきた。


ポケットから携帯を取り出す。


11時59分。


「もうすぐ日が変わる。」


「お、鐘が鳴り始めた!!」


ぼーんぼーん、と身体全体に響くように鐘が鳴る。


「ねぇ、隆也。」


「なんだよ。」


「抱きついても良い?」


「・・・・・答え聞く前からやってんだろ。」


オレよりも一回り小さい身体を抱きしめた。


ギュッとがしがみつく様に力をこめてくる。


「どうした。寒いか?」


小さく顔を振って否定を告げてくる。


「何?」


「このまま、このまま、で。」


小さく呟かれた声が、コイツらしくなくて。


思わず回した腕に力をこめた。


「隆也、来年も・・・つーか今年か。今年も、よろしく。」


「あぁ、仕方ないから面倒見てやるよ。」


フフ、と小さく漏らされた笑いに少し安心して、
軽く頬に口付けた。







そして、このまま鐘の音が鳴り終わるまで。





いや・・・鳴り終わっても。





「ずっと、一緒に、いろよ。」





「・・・こっちのセリフだ、バカ隆也。」




こんな風に。




二人で。




ずっと。