壁に凭れ掛かって玄関を見つめる。
アイツはまだ来ない。
手に持った箱を確かめるように軽く握った。
心臓の鼓動が半端じゃない。
他の人に聞こえてしまいそうなくらいドキドキしてる。
「・・・・もう、帰りたい。」
ハァ、と溜め息を吐いて俯いた。
「こんなトコで何してんの?。」
「うわぁっ!!!!!!」
思わず声を上げると、相手も驚いたらしく何歩か後ずさった。
「ちょ、ちょっと、何?そんなに驚くとことだった?今。」
水谷が目をパチクリさせて言う。
「わ、悪い。ちょいボーっとしてたから・・・。」
慌てて手に持ってたものを後ろに隠す。
そこで気が付いた。
「水谷、それ・・・」
「え?あぁ、コレ?イイだろー、さっきもらっちゃった。」
水谷が持っていた箱。
キレイにラッピングされて、いかにも、な感じの。
嬉しそうに笑うのを見て、チクリと胸が痛む。
「よ、良かったな、お前なんかにくれるもの好きが居て。」
うまく笑えてるかどうかよく分からない。
どうしよう、何か泣きたくなってきた。
「何だよ、それー。」
水谷がふざけて感じでパンチを繰り出してくる。
オレはいつもみたいにそれをかわそうとして、腕を出した。
「あれ、、それ何?」
水谷の視線の先。
オレの右手。
「あ・・・・・」
雑にラッピングされた箱が一つ。
あーもう。
うっかりにも程があるよ、オレ。
「こ、これは・・・。」
何て言おう、何て言ったら誤魔化せる?
だってホントのことなんて言える訳がない。
そんな惨めなことできやしない。
まさか、『君のために作ってきました』だなんて。
「・・・・、もしかして誰か待ってた?」
「え。」
「もしかして、それ、誰かにあげる、とか。」
水谷との距離が少し縮まった。
オレの背中には壁。
逃げられるハズがない。
「ねぇ、そうなの?」
何でコイツこういうときだけ勘が冴えてるんだよ!?
だんだんと縮まる距離と、水谷の言葉に追い詰められてパニック。
心臓はもうオーバーヒート寸前。
「ね、・・・」
「す、好きです!お友達からお願いします!!!」
・・・・・・・あれ。
オレ今何した。
っていうか現在進行形で何してんの、オレ。
何で水谷にチョコ突き出しちゃってんの!?
つーか、『お友達から』って、今すでにもう、お友達だっつーの!!
パニくって何しでかしちゃってんの、オレ!!
「ゴメン!!」
慌てて引っ込めようとした腕をつかまれる。
恐る恐る顔を上げた。
「あれ・・・?」
水谷が笑顔だ。
「恋人からで、お願いします。」
オレの手から箱を抜き取って水谷が言った。
・・・・・泣いちゃっても、良いですか?