「三橋、今度の休みどうするんだ?」
帰り支度途中に何となく隣で着替えてた三橋に声をかけた。
「い、従兄弟に、あいに、いくよ。」
「へぇ、そっか。」
こいつの口から従兄弟という言葉を聞いたのは初めてで、何となく興味がわいた。
「去年までは、毎年会いに、来てたんだけど。今年は俺が、行くんだ。」
「ふーん。従兄弟どこに住んでんの?」
何気なく聞いただけだったのに、すごく後悔した。
三橋の表情がみるみる悲しげになっていったから。
多分きっと何か聞いちゃいけなかったんだと思ったけれど、もう遅い。
「え、っと・・三橋・・。」
「すご、く・・・い・ところ・。」
俯きながら小さな声で発せられた言葉。
聞き返してもよいものかと迷っていると、三橋が顔をあげ、泣きそうに笑った。
「すごく、とお、い、ところ、だよ。」
「あ・・・・・。」
一瞬にしてすべてを理解して。
わからなかった自分に腹が立って。
何より、三橋にあんな顔をさせたのに腹が立って。
苦しくて苦しくて、俺が泣いてしまった。
「阿部、くん。俺、その人のこと、すごく、大好き、なん、だ。」
「・・・今でも?」
差し出されたタオルを受け取って三橋に背中を向ける。
「う、ん!!今でも大好き。・・・これからもずっと、大好き、だよ。」
「そっかよ・・・その人、いい人だった・・・・いい人なんだな。」
ごしごしと目元を拭いて、向き直ると心からの笑顔を浮かべた三橋がそこにいた。
「すごく、すごく、いい、ひと。その人が笑ったら、俺も、笑いたく、なる、よ!」
「そっか。いいな、それ。」
オレも会ってみたかったよ、と言うと三橋がまた笑って、そう、だね。なんて言うから。
また少し、泣けてきてしまうのだ。
羨まし過ぎるくらい想われているその人に、
叶わない嫉妬も感じながら。