明日真的萌シチュエーションその3。
『先生、生徒、卒業式』
「ホント、あっという間だったけど、ありがとう、皆。」
少しだけ涙ぐみながら最後のHRで先生が言う。
クラス中がしんみりしたのを見て、あわてたように笑顔になって。
「最後だから特別、じゃなくて、最後だけどいつもどおり、にしような、皆!!」
先生らしい。
いつも明るく皆を引っ張って行ってくれた。
俺たち生徒ひとりひとりのことを考えてくれて。
何に対しても一生懸命で。
すごく、良い先生だった。
HRが解散したあとしばらくして先生の姿が見えなくなった。
みんな探していたけど見つからないみたい。
だけど、俺は知ってる。
きっと、いつもの場所。
放課後、先生が必ずいた場所。
「せんせ、またここに居たの?皆さがしてたよ。」
「おう。来たか。」
立ち入り禁止の屋上の柵にもたれかかってタバコを吸っていた先生を見つけたのは偶然だった。
あの日、たまたまちょっとした好奇心で手を掛けた屋上のドアノブ。
まさか開くとは思わなかったし、それよりもそこに居た先生の姿に驚いて。
俺は言葉も発せず、ただ立ち尽くした。
そんな俺を見て先生はいつもとちょっと違う感じの笑みを浮かべて、
『こうなったら共犯者になれ』ってチョコレートをひとつくれた。
お菓子の持込だって禁止なのに。
それから何度も俺はここを訪れて、先生と色んな話をした。
友達とつるむのも楽しかったけど、先生と居る時間はそれ以上に楽しくて。
そして、いつしか俺は。
「もう、ここでこうやって会えるのも最後、だね。」
「あぁ。」
短く告げられて、少しだけ心が痛む。
当たり前だけど、先生にとって俺はただの生徒だ。
先生は何度もこうやって居なくなっていく生徒を見送っているから。
今回だって、同じ、なんだろうな。
俺はその中の一人ってだけ。
分かってるけど、
「さみしい。」
「え?」
「あっ、いや、えっと!!」
気づいたときにはもう遅くて。
俺の心のつぶやきはしっかりと先生に届いてしまったあとだった。
「そっか。」
けれどやっぱり先生の反応は変わらず淡白で。
いっそう落ち込まずにはいられなかった。
すると、俯いた俺の頭に先生の大きな手が乗せられて、
思わず顔を上げるとそのまま引き寄せられた。
「・・え・・せ、んせ?」
「最後まで誰にも話さなかった優秀な共犯者に、ご褒美をあげないとな。」
そうやって笑う先生はどこかいつもと違っていて。
いや、皆が知ってる先生じゃないだけで、俺は知っていたけれど。
だってここでの先生はいつもこうだったから。
どこか大人で、ちょっと怖いけど、カッコよくて、すごく。
「すき」
「・・・おい。」
そうだ、俺はいつの間にか先生を好きになってたんだ。
生徒から先生への憧れじゃなくて。
俺から、先生と言う一人間への、気持ち。
「卒業式中には泣かないのに、どうして今泣くんだ。」
「っわかんない・・だって、俺、嫌だ、卒業するのやだ。」
先生と会えなくなってしまうのが、こんなにも嫌だ。
そういうと先生はまた笑った。
「オレとしては嬉しいんだけどな。」
「っ・・・!?」
止めを刺されて涙が止まらなくなる。
「先生は、俺のことどうでも良いかも知れないけどっ・・俺はっ!!」
「違うから、とりあえず黙れよ。」
「っ!!!」
不意打ちでのキス。
タバコの味が、した。
「これで晴れて先生、生徒を卒業できるんだ。こんなに嬉しいことはないと思わないか?」
呆然とする俺に、そう言って笑みを浮かべた先生は
至上最高にカッコよかった。